ワインといえばフランスやイタリアを思い浮かべる方が多いと思いますが、実はスペインワインの歴史もフランスやイタリアと同じぐらい深く、様々な歴史が詰まっています。今回は、そんなスペインワインの歴史の一部について書いていきたいと思います。
ローマ時代の遺産
スペインワインの歴史は、ローマ帝国の時代に遡ります。紀元前2世紀には、ローマ人がブドウ栽培とワイン醸造をこの地に持ち込みました。彼らはワインを重要な通貨とし、スペインのブドウ栽培を発展させました。この時代から、スペインのワインはその品質と多様性で評価されました。中世には、モスリムの支配の下で、スペイン南部でワイン生産が続けられました。その後、キリスト教徒によるレコンキスタ(イスラム支配からの回復)が進み、ワイン生産はキリスト教徒の支配地域でさらに発展しました。1492年のコロンブスのアメリカ大陸到達後、新大陸からぶどうがもたらされ、スペインのワインに新しい品種と風味が加わりました。これが「コンキスタードーレス」(新世界からの征服者)と呼ばれるワインの一部で、スペインワインの多様性を増加させました。
モンサン・ミシェルの戦いとシェリー酒
15世紀、モンサン・ミシェルの戦いでの勝利により、スペインはフランスから多くのブドウ畑を奪いました。これがスペインにおけるブドウ栽培の大幅な増加につながり、シェリー酒の生産が盛んになりました。シェリー酒はスペインの代表的な輸出品として知られ、シェリー酒の酒蔵は訪れる価値がある観光名所となっています。シェリー酒の名前は、スペイン語で「ジェレス」(Jerez)と発音されます。この名前はアラビア語の「シャラ」(شرارة)に由来し、これは「光り輝く」や「煌びやかな」といった意味があります。この名前はシェリー酒の独特な輝きに由来しています。18世紀にイギリスとの貿易が本格的に始まると、シェリー酒は国際的に知られるようになりました。
フィロキセラの脅威とカタルーニャの奇跡
19世紀末、フィロキセラと呼ばれる害虫の流行がヨーロッパ全体で多くのブドウ畑を壊滅させました。フィロキセラは急速に広がり、ヨーロッパ全土のぶどう園に被害をもたらしました。これは当時のヨーロッパにおけるぶどう栽培とワイン生産に深刻な脅威でした。ぶどう畑は荒廃し、ワイン産業は崩壊寸前に追い込まれました。しかし、スペインのカタルーニャ地方は奇跡的にこの害虫に耐性を持つブドウの株を保持しており、スペインワインの復興に貢献しました。
リオハワインの誕生
リオハワインは、19世紀にフィロキセラの流行後、リオハ地方のワイン生産者たちによって再興されました。この地域は高品質のテンプラニーリョブドウを生産し、木樽で熟成させる伝統を築きました。20世紀になると、リオハ地方のワイン産業はさらに発展しました。ワイナリーが近代化され、品質管理が向上しました。この時期、リオハはスペイン国内外で高品質なワインを生産する地域として評価されました。そして1991年にリオハはスペインで最初に「Calificada(高品質な)」の認定(D.O.C.認定)を受けたワイン産地となりました。
ヴィンテージ2008: 世界的な注目
2008年には、スペインワインが国際的な注目を浴びました。この年、スペインは世界的なワイン生産国としての地位を確立し、多くの評論家から高い評価を受けました。スペインのワインは品質、多様性、価格競争力、そして国際的な展示会への積極的な参加により、2008年に国際的なコンクールで高い評価を受けたのです。特に、リオハ地方のヴィンテージ2008は、その優れた品質で称賛され、スペインワインの躍進を示す典型的な例となりました。
まとめ
スペインワインの歴史的出来事はまだまだあります。今回は一部だけの紹介でしたが、そのひとつひとつを深掘りしても、とても面白いエピソードばかりなので、機会があれば触れていきたいと思います。こういった歴史や物語を知った上で飲むスペインワインは格別です。今回のブログがスペインワインを好きになって頂けるきっかけになることを願っています。ぜひ素敵なワインライフをお過ごし下さい!
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